カレーや煮込み料理は、大鍋のまま放置しない。保存する分は浅い容器へ小分けし、速やかに冷やして冷蔵・冷凍します。ウェルシュ菌の芽胞は、十分に煮込んでも残ることがあります。
原因と症状
原因になりやすいのは、肉・魚介類・野菜を使った煮込み料理です。カレー、シチュー、スープ、麺つゆなどでも発生例があり、料理の名前よりも調理後に室温で長く置くことが問題になります。
ウェルシュ菌は自然界に広く分布し、芽胞(がほう:熱などに耐えて生き残るための丈夫な構造)をつくります。食中毒に関係する耐熱性の芽胞は、通常の煮込みでも残ることがあります。
この菌は酸素が少ない環境を好みます。大鍋の内部は酸素が少なく、ゆっくり冷める間に菌が増えやすくなります。食品と一緒に多くの菌を食べ、腸内でつくられる毒素によって腹痛や下痢が起こります。
主な症状
発症までの目安は6〜18時間、平均約10時間です。腹痛と下痢が主で、おなかが張ることもあります。発熱やおう吐はあまりみられません。
多くは1〜2日で回復するとされていますが、持病のある人、子ども、高齢の人などで重くなる場合もあります。症状や時間だけで原因を決めたり、熱がないから受診不要と判断したりしないでください。
調理での予防
予防の三原則
この原因での注意点
鍋のまま放置しない
- できるだけ作った日に早めに食べる:何度も「温める・室温で冷ます」を繰り返さないよう、食べる量を見込んで作ります。
- 保存する分は一食分ずつ小分け:清潔な浅い容器などへ移し、厚く盛らずに冷まします。大鍋のまま冷蔵庫へ入れるだけでは、中心が冷えるまで時間がかかります。
- あら熱を速やかに取り、すぐ冷蔵・冷凍:完全に冷えるまで室温で何時間も待たないでください。冷蔵保存は10℃以下を目安にし、冷却中も菌を増やさないことが重要です。
食べる分を再加熱
適切に冷却・保存した料理は、食べる分だけ取り出して再加熱します。カレーのようにとろみのある料理は、おたまで鍋底までかき混ぜ、全体をむらなく温めてください。表面の湯気や一部の沸騰だけで判断しません。
再加熱は、芽胞から増えた菌を減らすためにも必要ですが、芽胞をなくす処理ではありません。温めた後は早めに食べ、再び室温で放置しないようにしましょう。
小分け保存の用品
煮込み料理を薄く小分けするための浅い保存容器です。容器に入れるだけでなく、速やかに冷やして冷蔵します。
日常の予防
作り置きする日は、冷蔵庫の空きと保存容器を先に用意します。容器に調理日時を書き、食べる分だけ取り出します。日付だけで安全とは判断せず、冷却・保存状態が不明な料理は食べないでください。
手洗いの用品
石けん・ハンドソープと、清潔な個人用タオルまたはペーパータオルを用意します。器具用の洗剤や塩素系漂白剤を、手洗いに使わないでください。
嘔吐物の片付け
原因が分からない嘔吐・下痢にも備えるための手順です。症状だけで原因を決めず、吐いたものや便には素手で触れないでください。
片付けの用品
- 身を守るもの:使い捨て手袋・マスク・エプロン。
- 拭き取り・廃棄用:ペーパータオル、密閉できる袋。
- 物の消毒用:場所・材質に合う消毒用品。
片付けの手順
- 周りの人を離し、換気します。使い捨て手袋・マスク・エプロンを着用します。
- 乾く前に、ペーパータオルで外側から中心へ静かに拭き取ります。汚れを広げないようにします。
- 汚れを取り除いてから、場所・材質に合う方法で消毒します。
- 使用した物を袋に密閉して廃棄し、手袋を外した後も石けんと流水で手を洗います。十分に換気してください。
塩素系漂白剤は物の消毒用です。手や食品には使いません。薄める量と処理方法は、ノロウイルスを想定した嘔吐物処理の手順・用品で確認してください。感染が判明している場合は、医療機関・保健所の指示に従います。
受診の目安
飲める場合は水分を少しずつ補い、医療機関へ相談します。
- 水分がとれない、尿が少ない、ぐったりする、強い腹痛、血便、症状が強い・長引く場合は受診を急いでください。
- 乳幼児、高齢の人、妊娠中の人、持病や治療で免疫が低下している人は早めに相談します。
意識がはっきりしない、呼びかけに反応しない、息苦しい場合などは119番です。下痢止めなどを自己判断で使わず、医師・薬剤師に確認してください。無理に吐かせないでください。
食べた物と日時、調理後の保存方法、発症時刻、同じ食事をした人の症状を医師へ伝えます。残った食品・包装・レシートは保管し、扱い方を保健所へ相談します。原因確認のために食べ直さず、記録や保管のために受診を遅らせないようにしましょう。

