ヒラメの刺身などで起こるクドア・セプテンプンクタータ(以下、クドア)による食中毒は、見た目や新鮮さだけでは防げません。十分な加熱、または条件を満たした冷凍処理が予防のポイントです。
水分が取れない、嘔吐が続く、強い腹痛がある場合は、早めに医療機関へ。意識や呼吸に異常がある場合は119番に連絡してください。
原因と症状
ヒラメに関係する小さな寄生虫
この記事で扱うのは、クドア・セプテンプンクタータ(Kudoa septempunctata)です。ヒラメの筋肉に寄生する粘液胞子虫(小さな胞子を作る寄生虫)の一種で、クドア属のすべてを同じ食中毒の原因とするものではありません。
胞子は約0.01mmと小さく、家庭で目視して見つけ、取り除くことはできません。クドアが寄生したヒラメを、刺身やマリネなどの生、または加熱不足で食べると食中毒が起こることがあります。人の体内で成育する寄生虫ではありません。
食後数時間で下痢・嘔吐
食べてから約2〜20時間で、下痢、吐き気、嘔吐などが起こります。一時的な症状で、多くは軽症で回復するとされています。ただし、症状や発症時間だけでは原因を特定できません。「ヒラメを食べたからクドア」と自己判断せず、症状が強い・続く場合は受診してください。
調理での予防
予防の3つのポイント
- 加熱するときは、中心温度75℃で5分以上を確認する。
- 冷凍は−20℃で4時間以上という処理条件を確認し、家庭の冷凍庫へ入れただけで安全としない。
- 生食するヒラメは、販売店で用途や管理・処理の状況を確認する。目視や鮮度だけに頼らない。
中心75℃で5分以上
厚生労働省は、クドアの病原性を失わせる条件として、中心温度75℃で5分以上の加熱を示しています。一般的な食中毒予防で見かける「75℃で1分」と取り違えないでください。
「5分」は、魚の中心が75℃に達してから、その温度以上を保つ時間です。火にかけ始めてからの時間ではありません。厚い切り身や加熱むらに注意し、中心温度と保持時間を確認しましょう。
加熱の確認を助ける道具
家庭の冷凍を過信しない
厚生労働省が示す冷凍条件は−20℃で4時間以上です。ただし、冷凍庫の設定や庫内の温度と、魚の中心まで冷える状態は同じではありません。「冷凍庫へ入れて4時間たてばよい」とは判断できません。
大分県も、この冷凍処理は一般家庭では困難と案内しています。条件を確かめられない場合は、必要な処理を確認できる商品を選ぶか、中心まで十分に加熱してください。クドアの処理条件を、アニサキスなど別の寄生虫にそのまま使うことも避けましょう。
日常の予防
購入時に用途を確認
ヒラメには、生産段階の管理や出荷前検査などの対策が行われています。すべてのヒラメにクドアがいるわけではありません。生で食べる予定なら、生食用かどうかに加え、冷凍処理などについて不明な点を販売店へ確認しましょう。加熱用の表示があるものは、生で食べないでください。
冷蔵と手洗いも続ける
購入後は表示に従って保存し、早めに使います。冷蔵は、寄生しているクドアを取り除く処理にはなりません。一般的な衛生管理として、調理の前後は石けんと流水で手を洗い、生魚に使った包丁・まな板は洗浄し、材質に合う方法で消毒してください。
加熱後の食品を、生魚が入っていた皿へ戻さないようにします。こうした衛生管理と、クドアに必要な加熱・冷凍処理を組み合わせましょう。
嘔吐物の片付け
原因が分からないときは丁寧に
クドアは人の体内で成育しませんが、嘔吐や下痢の原因がクドアかどうかを家庭で決めることはできません。ノロウイルスなど別の原因も考え、片付ける人以外を離し、手袋などで直接触れないように対応します。
具体的な一般手順は、ノロウイルスの記事「嘔吐物の片付け」を参照してください。片付け後は石けんと流水で手を洗います。塩素系製品は表示と材質を確認して使い、手指には使わないでください。
受診の目安
水分が取れないときは受診
意識がはっきりして飲み込める場合は、水分を少量ずつ補います。水分を飲めない・吐いてしまう、尿が少ない、ぐったりする、強い腹痛や血便がある、症状が続く場合は医療機関へ相談してください。乳幼児や高齢の人など、脱水が心配な場合は早めに相談しましょう。
無理に吐いたり、自己判断で下痢止めなどの薬を使ったりしないでください。意識や呼吸に異常がある場合は119番に連絡し、無理に飲ませないでください。
食べた物と時間を伝える
受診時は、食べた食品・日時、症状が始まった時刻、一緒に食べた人の様子を伝えてください。残った食品は食べず、包装やレシートとともに保管し、保管方法や提出について保健所に相談します。同じ食事をした複数の人に症状が出た場合も、医療機関や保健所へ伝えましょう。

