真空パックでも「要冷蔵」は冷蔵する。ボツリヌス菌は、酸素の少ない密封食品の中で増え、毒素を作ることがあります。包装の見た目ではなく保存表示を確認し、自家製の瓶詰めや真空包装も過信しないでください。
原因と症状
ボツリヌス菌は土や水などに広く存在し、熱に強い芽胞(がほう:厳しい環境でも生き残るための構造)を作る細菌です。酸素の少ない環境で菌が増えると、神経の働きを妨げる毒素を作ります。
食品中にできた毒素を食べて起こるのが、ボツリヌス食中毒です。自家製の瓶詰め・缶詰・発酵食品や、要冷蔵なのに常温で保存した密封食品などが原因になります。
主な症状
発症は食後8〜36時間が目安ですが、幅があります。吐き気・おう吐・下痢のほか、物が二重に見える、話しにくい、飲み込みにくい、手足に力が入らないなどの症状が特徴です。重くなると呼吸が難しくなります。
下痢がない場合や、この時間から外れた場合も、症状だけで否定できません。見え方・話し方・飲み込みの異常があれば、様子を見続けず受診してください。
乳児では仕組みが違う
乳児ボツリヌス症は、食品にできた毒素ではなく、飲み込んだ芽胞から乳児の腸内で菌が増え、毒素を作ることで起こります。便秘が続く、母乳やミルクを吸う力が弱い、泣き声が小さい、体の力が弱いなどの変化に注意します。
調理での予防
予防の三原則
この原因での注意点
特に大切なのは、食品の中で菌を増やさず、毒素を作らせないことです。保存状態が分からない食品や異常のある食品を、再加熱して食べることは避けてください。
保存表示を確認
- 「要冷蔵」「10℃以下で保存」:未開封でも冷蔵が必要です。もっと低い温度の指定がある場合は、その表示を守ります。
- 常温保存できるレトルト食品:加圧加熱殺菌された製品です。似た袋でも製法は異なるため、保存方法の表示で確認します。
- 開封した後:未開封時の常温保存表示をそのまま当てはめず、開封後の表示を守り、早めに食べます。
芽胞と毒素の違い
毒素は十分な加熱で働きを失いますが、芽胞は熱に強く、通常の煮沸では残ることがあります。毒素への加熱と、芽胞をなくす殺菌は別の処理です。家庭で温めたり、瓶を煮沸したりするだけで、市販の常温保存食品と同じにはなりません。
家庭の瓶詰め・真空包装を、自己流で常温の長期保存用にしないでください。冷蔵・冷凍しても無期限に保存できるわけではなく、低温だけで全ての危険をなくせるとは考えません。
持ち運びの用品
日常の予防
乳児にはちみつを与えない
庫内温度の確認
市販の要冷蔵食品は、その製品の保存温度と期限を守ります。冷蔵庫の設定ダイヤルだけで判断せず、温度計で庫内を確認し、冷気が通るよう詰め込みすぎを避けます。
「10℃以下」は、家庭のあらゆる密封食品を安全にする共通条件ではありません。低温で増える種類もあります。市販品の管理条件を自家製の瓶詰め等へそのまま当てはめず、長期保存を過信しないでください。
異常があれば食べない
パックや缶の膨らみ、異臭などがあれば、味見せず食べないでください。見た目やにおいに異常がなくても、安全とは限りません。保存状態が不明な場合も食べず、購入先や保健所へ相談します。
嘔吐物の片付け
この欄は、原因が分からないおう吐にも備えるための案内です。救急対応・受診を優先します。吐いたものには素手で触れず、使い捨て手袋・マスク・エプロン、ペーパータオル、密閉できる袋を用意し、片付けた後は手を洗います。
ノロウイルスなども考え、嘔吐物処理の手順・用品を確認してください。塩素系漂白剤は物の消毒用です。手や食品には使わず、疑わしい食品を消毒して食べようとしないでください。
受診の目安
物が二重に見える、話しにくい、飲み込みにくい、力が入らない場合は直ちに医療機関へ。息苦しい、急にぐったりする、意識がおかしい場合などは119番です。原因の確定を待たず、症状と食べた物を伝えます。
乳児で母乳やミルクを飲む力が弱い、泣き声が小さい、体に力が入らないなどの変化があれば、すぐ小児科へ相談します。呼吸がおかしい、反応が弱い場合などは119番です。
食べた食品と日時、保存方法、発症時刻を伝え、包装・レシート等があれば相談時に役立てます。残った食品の扱いは保健所へ相談し、食べ直したり他の人に渡したりしないでください。飲み込みにくい人に無理に飲食させず、無理に吐かせないでください。記録や食品の保管で受診を遅らせないようにします。

