病原大腸菌には、O157などの腸管出血性大腸菌以外にも、下痢や腹痛を起こす種類があります。汚染された食品・水や、手・器具を介した汚染を防ぐことが大切です。
原因と症状
「その他」はO157など以外のグループ
大腸菌(Escherichia coli)の中には下痢を起こす病原性を持つものがあり、下痢原性大腸菌とも呼ばれます。この記事は、腸管出血性大腸菌(O157など)を除く主なタイプを扱います。「その他」という一つの菌があるわけではありません。
- 腸管病原性大腸菌(EPEC):下痢や腹痛などの胃腸炎を起こす。
- 毒素原性大腸菌(ETEC):腸で働く毒素により、水のような下痢を起こす。
- 腸管侵入性大腸菌(EIEC):腸の細胞に入り込み、発熱や腹痛、血便を起こすことがある。
- 腸管凝集付着性大腸菌(EAEC/EAggEC):腸の細胞に付着して下痢を起こす。資料によって「腸管集合性」などの呼び方もある。
食品と水、手や器具からの汚染に注意
人や動物の便に由来する菌で食品や水が汚染されると、感染につながります。特定の肉だけの問題ではなく、生野菜や加熱後の料理も、汚れた手や器具から菌が移れば原因になり得ます。国内でも「その他の病原大腸菌」による食中毒が報告されています。
症状と発症までの時間はタイプで異なる
下痢、腹痛、発熱、嘔吐などがみられます。東京都の資料では、EPEC・ETECは12~72時間、EIEC・EAggECは1~5日が潜伏時間の目安です。症状や時間だけでタイプを判断できず、血便がある場合もO157と決めつけずに受診してください。
調理での予防
予防の三原則
この原因での注意点
そのまま食べる野菜や果物を先に扱い、生肉は後に扱います。野菜は流水でよく洗いますが、洗浄だけですべての菌をなくせるとは考えず、肉汁や汚れた手が付かないようにしてください。生肉用の包丁・まな板・トングと、盛り付け用は分けます。
加熱と水の衛生を確認する
加熱が必要な食品は、家庭での一般的な食中毒予防の目安として中心75℃で1分以上を確保します。厚い肉やひき肉料理は中心まで確かめ、加熱後の料理を生肉用の皿へ戻しません。
飲用・調理・製氷には、安全性を確認できる水を使います。井戸水などは見た目が透明でも安全と判断せず、水質検査や地域の衛生管理の案内を確認してください。
中心温度を確かめる用品
日常の予防
冷蔵と早めの消費を組み合わせる
要冷蔵品は表示に従って保存し、肉汁がほかの食品へ漏れないよう袋や容器に入れます。調理済みの料理は室温に長く置かず、保存するなら浅い容器へ小分けして速やかに冷やします。冷凍しただけで菌がなくなったとは考えません。
体調が悪いときは人の食事を作らない
トイレの後、調理前、食事前、おむつ交換の後は石けんと流水で手を洗います。下痢や嘔吐があるときは、ほかの人の食事作りを控え、家族にも手洗いを徹底します。
嘔吐物の片付け
これは原因がまだ分からない嘔吐にも備える手順です。本人の体調と受診を優先し、周りの人を離して、手袋・マスク・使い捨てエプロンなどを着けます。吐いた物はペーパー類で静かに拭き取り、使った物は袋に密閉し、最後に石けんと流水で手を洗います。
消毒する場所と材質を確認し、ノロウイルスの記事の処理手順も参照してください。物の消毒剤を手や食品へ使わず、食品の安全確認や治療の代わりにしません。
片付け用品をまとめて備える
受診の目安
血便、強い腹痛、高熱、水分がとれない、尿が少ないなどの症状は早めに医療機関へ相談してください。乳幼児、高齢者、妊娠中の人、免疫機能が低下している人は、症状が軽くても早めに相談します。
意識がおかしい、呼びかけへの反応が悪いなど、様子が明らかにおかしいときは119番です。
水分をとり、自己判断で薬を使わない
意識がはっきりして飲み込める場合は、水分を少しずつとります。嘔吐で飲めないときは無理をせず受診してください。下痢止めや残っている抗菌薬などを自己判断で使わず、医療機関へ相談します。
食べた物と症状を記録する
食べた物・日時、症状が出た時刻、同じ食事をした人の様子を伝えます。残った食品・包装・レシートは原因確認に役立ちます。再び食べないよう分け、保管や提出は医療機関・保健所の指示に従ってください。

