麻痺性貝毒は、有毒なプランクトンを食べた貝などに蓄積する自然毒です。アサリ・カキ・ホタテなどが原因となり、口や手足のしびれ、麻痺を起こします。家庭での加熱に頼らず、採取地域の貝毒情報と、検査・出荷管理された食品を選ぶことが予防の基本です。
貝を食べた後にしびれが出たら、直ちに医療機関へ相談・受診してください。息苦しい、話しにくい、飲み込みにくい、麻痺が進む、意識がおかしい場合は119番です。片付けより救急対応を優先します。
原因と症状
貝に蓄積する自然毒
サキシトキシンやゴニオトキシン群など、神経の働きを妨げる毒成分の総称です。貝などが餌から毒を取り込み、その貝を食べることで中毒が起こります。細菌やウイルスによる食中毒とは原因が異なります。
代表的な原因食品は、毒化したアサリ、カキ、ホタテ、ムラサキイガイなどの二枚貝です。二枚貝以外の動物でも毒を持つことがあります。毒化しているかは外見では分かりません。
しびれ・麻痺に注意
食後30分程度で、舌や唇、顔、手足のしびれなどが現れることがあります。麻痺が全身へ広がり、重症では呼吸ができなくなる危険があります。食べてからの時間や症状だけで、原因を自己判断しないでください。
「少量だけ」「加熱したから」と様子を見ず、貝を食べた後のしびれは急いで相談します。30分は目安であり、その時間を過ぎたことを安全の根拠にしません。
調理での予防
加熱で安全にしようとしない
麻痺性貝毒は熱に強く、一般的な煮る・焼くなどの加熱調理では分解できません。酢や薬味でも取り除けません。貝の身だけでなく、調理した料理を「火を通したから大丈夫」と食べないでください。
洗う、砂抜きをする、身の一部を取り除くといった自己流の下処理を、安全確認の代わりにしません。ホタテの中腸腺(ウロ)に毒が多い場合もありますが、事業者が定められた加工と製品検査を行う仕組みと、家庭での部位除去は別です。
入手経路を確かめる
検査や出荷規制で管理された販売店の食品を選び、表示された保存・調理方法を守ります。こうした流通管理と、自己採取した貝は条件が異なります。回収・注意情報の対象なら食べず、販売店や自治体の案内に従ってください。
日常の予防
採る前に地域の情報を確認
- 採取する場所の自治体・水産関係機関が出している、最新の貝毒情報と採取ルールを確認する。
- 採取・喫食の自粛要請や規制がある場所では、対象の貝を採って食べない。人にも分けない。
- 管理された潮干狩り場でも、採った貝と持ち帰り用の貝を交換するなど、その施設の安全対策に従う。
- 安全性や採取場所が分からない貝は食べず、自治体や保健所へ確認する。
貝毒の検査や注意情報は、海域・貝の種類ごとに確認します。隣の場所や別の貝の結果だけで、自分が採る貝も安全とは判断しません。海の見た目や、以前食べて問題なかった経験にも頼らないでください。
嘔吐物の片付け
救急対応を先に
麻痺性貝毒が疑われるときは、片付けよりも受診・救急の手配を優先します。家庭で無理に吐かせると、吐いた物が気管に入る危険があります。
吐いた物がある場合は、ほかの人や食品が触れないようにし、片付けには使い捨て手袋などを使います。作業後は石けんと流水で手を洗ってください。残った食品や吐いた物は原因調査に使う場合があるため、保管・提出・処分の方法を医療機関や保健所へ確認します。
原因が確定するまでは感染性の食中毒も区別できません。詳しい汚れの処理はノロウイルスの記事の片付け方も参考にしてください。そこで示す消毒は、食品の麻痺性貝毒を取り除く方法ではありません。
受診の目安
食後のしびれは直ちに相談
貝を食べた後に口・顔・手足のしびれ、力が入らない、動きにくいなどの症状があれば、直ちに医療機関へ相談・受診します。呼吸や意識の異常、話しにくさ、飲み込みにくさ、進行する麻痺があれば119番です。自分で車を運転しないでください。
- 食べるのをやめ、同じ貝や料理をほかの人も食べないようにする。
- 無理に吐かせず、自己判断で薬を使わない。飲み込みにくい人や意識がおかしい人へ飲食物を与えない。
- 貝の種類、購入先・採取場所、食べた時刻と量、症状が始まった時刻を伝える。
- 同じ物を食べた人の状況を伝え、残った食品・包装・レシートを保管する。保管方法などは保健所の指示に従う。
一緒に食べた人は、症状の有無も医療機関へ伝えて対応を確認してください。貝毒かどうかは、症状だけで診断できません。

